【活動レポート】那須町立田代友愛小学校での研鑽会

【活動レポート】「知・徳・体」をこれからの時代にどう生かすか――那須町立田代友愛小学校の先生方と語り合った、学びの本来のあり方

福島県白河市を拠点に、子どもたちの「自分を信じる力」を育む学習支援・探究支援を行っている「探究スタジオ」代表の河島広幸です。

2026年7月6日(月)、栃木県那須町にある那須町立田代友愛小学校にお伺いし、全教職員の皆様を対象とした勉強会の講師を務めさせていただきました。同校の遠藤校長先生から、これからの教育について共に考える大変貴重なお声をかけていただき、この日を迎えることができました。

勉強会のテーマは、『日本の教育を変える初等教育のインパクト――大学入試の変化と、いま本当に求められている「学力」の本質』

小学校の先生方を対象に大学入試の変化についてお話しすることには、大きな意味があります。なぜなら、大学入試における評価基準の変化を丁寧に紐解いていくと、小学校が伝統的に大切にしてきた教育実践が、子どもたちの生涯の学びの土台としていかに価値あるものであるかが、確かな事実として浮かび上がってくるからです。

今回のレポートでは、勉強会で提示した客観的な事実と、その後に先生方と重ねた対話から得た深い気づきを、私自身の学びの喜びと共に綴らせていただきます。

1. 大学入試の変化:一発勝負の評価から、学びのプロセスの多面的評価へ

現在、日本の大学入試制度は、これまでの「一斉テストによる知識の暗記量やパターン処理の正確さを測るもの」から、個々の受験生が重ねてきた試行錯誤のプロセスを多角的に評価するものへと大きく移行しています。

推薦・総合型選抜が多数派となる現実

現在、私立大学における一般選抜(ペーパー入試)の割合はすでに4割を切り、推薦・総合型選抜が全体の61.7%に達しています。国公立大学においても、かつて提示された「推薦・総合型3割目標」に向け、東京大学や東北大学をはじめとする難関大学が、一発勝負のペーパーテスト依存から決別し、独自の多面的評価制度を導入・拡大しています。

「18年間の学びの軌跡」への関心

ポートフォリオ(活動記録)のデジタル化が進む一方で、近年は専門塾の支援や生成AIなどで体裁だけを整えた「借り物の言葉」の存在が課題となっています。そのため大学側は、書類選抜だけで合否を決めるのではなく、対面での口頭試問や独自の記述試験を高度に組み合わせ、受験生自身がこれまでどのように主体的に学び、問いを立ててきたかという「真実性」を細やかに見極める評価を重視するようになっています。

つまり、特定の数カ月間に詰め込んだ受験テクニックではなく、高校生活、あるいはそれ以前を含む「これまでの生き方や学びの軌跡」そのものが問われる時代が訪れているのです。

2. 伝統的な「徳育」と「非認知能力」:知・徳・体の三位一体を可視化する

こうした変化を前提としたとき、私たちが着目すべきなのは、日本の小学校教育が伝統的に大切にしてきた「知育・徳育・体育」の三位一体のあり方です。

これまで、日本の教育現場において「知」の部分は、ペーパーテストや通知表の数値という、客観的で可視化しやすい手法で評価されてきました。選抜や評価の場面でも、この「知」が主役であり続けた歴史があります。

一方で、他者と協働する力、やり抜く力、当事者意識といった「徳」の領域は、日々の集団生活や学校行事を通じて豊かに育まれながらも、そのプロセスや成果を他者に見える形で評価・可視化することは容易ではありませんでした。

しかし、近年の推薦・総合型選抜で求められている「非認知能力」とは、まさにこの伝統的な「徳」の領域そのものにほかなりません。

【伝統的な「徳育」と「非認知能力」のつながり】

従来の「徳育」
(集団生活や行事で培われる、他者協働、主体性、当事者意識)
(これまでは無意識の指導や所見欄による記述)
現代の「非認知能力」
(ポートフォリオや多角的な対面評価を通じて、「他者に伝わる形」に意識化・言語化される)

「非認知能力の育成」と聞くと、何か海外から新しく輸入された概念のように感じられますが、その本質は、日本の小学校が長年無意識的・伝統的に培ってきた「徳育」の営みの中に、深く息づいています。

変わったのは、それを単に「無意識の指導」にとどめるのではなく、これからの複雑な社会、あるいはこれからの入試制度に合わせ、子どもたち自身が「他者にも伝わる言葉」として意識化し、可視化していくことが求められているという点です。

「知」の重要性が決して損なわれるわけではありません。確かな「知」の土台の上に、これまで可視化されにくかった「徳」の価値をしっかりと位置づけ、育てていくこと。この「知・徳・体」の現代的な結びつきを再確認できたことは、先生方との学び合いにおける、極めて大きな収穫でした。

3. 模造紙に記された、先生方の真摯な「問い」と「実践の模索」

私の話題提供に続き、先生方にはワークショップに取り組んでいただきました。模造紙に貼られた付箋の言葉を見つめるうちに、私は教育の最前線を担う皆様の、プロフェッショナルとしての誠実さと深い思索に強く引き込まれました。

その対話の中で共有された、いくつかの軸をご紹介します。

① 従来のあり方を問い直し、自らを変革しようとする意識

「これからの子どもたちに必要なもの」「これからの友愛(田代友愛小学校)に必要なもの」という問いに対し、大人の側の関わり方を厳しく見つめ直す意見が数多く見られました。

  • 「教員として何を手放し、何を勝ち(持ち)続けるべきか? 新たに何を持つべきか?」
  • 「今までの『こうでなければならない』学校ではない。教えるだけではだめなのではないか」
  • 「子ども自身が気づき、自分が何を学ぶのかを自ら答えられる力をもつために、大人が行うべき支援の方法とは何だろう?」
  • 「単に『頭がいい(勉強ができる)』だけでは、AIで良い。『問いを立てる力』が重要。どうしたら身につくか考えていきたい」
  • 「学び方のエッセンスとして『自分で探求したいならいくらでも付き合う』ような、大人、地域、子どもとともにある学校づくりを」

② 入試の変化と、これまでの実践への静かな確信

大学入試という最上流の変化を知ったことで、自分たちが目の前の子どもたちと向き合ってきた時間が間違っていなかったのだという、心強い確信を共有してくださいました。

  • 「どれだけ非認知能力を身につけられたか、これこそが日本の教育が求める学校の根本となるもの。『入試』という視点からのお話で、学校の取り組み(非認知能力の育成)は『正解』なんだ!!と確信がもてました」
  • 「今、田代友愛でやっていることが、長い目で見たら間違いないのだと感じられた。ブレない信念をもち、決定できるようになりたい」
  • 「探求が導入された時期に受験生をもつ親でした。あの時は『やらされる探求』であり、どこをどう誘導すればいいのか分からず、子どもを理解しきれていませんでした。あの頃、小学校で、この田代友愛のような学びがなされていたら……と思ったりします」

③ 資格制度や社会のニーズに対する、本質的な批評

さらに先生方の目は、学校の内側にとどまらず、子どもたちがこれから対峙する社会全体の仕組みにも向けられていました。

  • 「英検、漢検なども大入試の一つの材料となるようだが、単にペーパー的な資格のように持つことがよいという傾向(形骸化)になるのは意味がない。それをどうその人の特長とするか」
  • 「社会(企業)のニーズはどこまで変わってきているのか? とがった能力を育成するのは大事だと思うが、社会はそれに雇用的に追いつけるだろうか?」

4. 教育現場の試行錯誤への敬意――私自身がいただいた大きな学び

今回、私は「講師」という立場で皆様にお話をさせていただきました。しかし、グループワークが始まってからの先生方の表情、模造紙を囲みながら熱心に対話を深める横顔を見つめているうちに、私の胸は深い感動と敬意で満たされていきました。

私自身がこの勉強会を通じて得た最も大きな学び、それは「先生方は、教える存在であると同時に、生涯を通じて学び続け、問いを立て続ける実践者である」という深い事実です。

教育の最前線には、あらかじめ決められた「たった一つの正解」など存在しません。

「この方法で本当に子どもの未来が開けるだろうか」「明日、この子どもたちのために、具体的に私たちは何をすべきか」
先生方の胸の奥には、常にそのような細やかで、切実な問いがあります。そして、その問いに対する応答に誠実に向き合い、日々の実践から少しずつ答えを見出し、自分自身のあり方やカリキュラムを日々丁寧にアップデートされています。

絶えず学び、絶えず自らを更新し続ける先生方のその姿こそが、子どもたちにとっての「学びの最高のロールモデル」そのものにほかなりません。
先生方の真摯な姿勢に触れることができたこの日の経験は、私自身が白河の「探究スタジオ」で子どもたちに伴走していく上での、かけがえのない道標となりました。

5. 心からの感謝を込めて

最後になりますが、このような素晴らしい勉強会の機会をご提供くださいました、那須町立田代友愛小学校の遠藤校長先生に、深く、心より感謝申し上げます。校長先生が示す力強い教育ビジョンと、学校全体を温かな探究の場として整えようとされる誠実なリーダーシップに、深く感銘を受けました。

そして、放課後の貴重なお時間の中、最初から最後まで熱心に耳を傾け、豊かな対話によって勉強会を特別な学びの場へと昇華させてくださった先生方お一人おひとりに、心からの感謝を捧げます。

「自分たちが日々重ねている教育実践は、子どもたちの未来の確かな土台になっている」
先生方がそう自信を深めていくその背中こそが、子どもたちが自らを信じて前へ進むための、最も温かな光となるはずです。

知・徳・体を現代社会の要請に合わせてアップデートしていく皆様の挑戦を、私も白河の地から心より応援し、またこれからも共に学び合っていきたいと強く願っております。素晴らしい出会いを、本当にありがとうございました。

【関連リンク】
那須町立田代友愛小学校様の公式ブログ(活動記録)でも、当日の勉強会の様子をご紹介いただいております。
田代友愛小学校 活動記録(校内研修)はこちら

探究スタジオ 代表
河島 広幸

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